どの年齢の犬にも股関節の問題は生じ、若くても老犬でも関係なく、小型犬だろうが大型犬だろうがその問題は起こる可能性はあります。確かに他の犬に比べ股関節の問題を起こしやすい犬種というのはあるかもしれません。
それに老犬が単に加齢であったり、関節や骨の自然な劣化が原因でその問題が生じやすいという事はあります。
しかし、股関節の痛みは概してどの犬にも起こりうる問題です。
股関節痛はもっとも多く患う場所ですが、犬は他にも肩、ひざ、ひじの関節も痛める事があります。
犬の中には痛みがひどくなり脊椎骨の間の関節を悪化させてしまう犬もいます。
犬の痛みや不快感の元凶を正確に診断する事が、治療を効果的に進める上で重要となります。痛みを完全に根絶する事が出来ず、長期間にわたり犬の不快感を何とかしようと治療する場合もあります。
犬の関節痛の兆候と症状
主な関節痛の兆候と犬が感じる不快感は以下の通りです。
- 足を引きずったり歩行困難になる
- 良い方の足が悪い方の足をかばう
- 足を地面につけない
- うさぎ跳びのように走る
- 動きがゆっくりでぎこちない
- 立ち上がる時苦労する
- 横になる時苦労する
- 階段の上りが困難に見える
- 良くある動きや動作をするのに苦しむ様子が見られる
- あまり歩きたがらず、飛んだり駆け上がったりしたがらない
- 乗り物に乗りこむ際、力をいれて飛び上がる様子を見せる
- 関節部分を執拗に舐めることがある
- 関節の腫れに気が付く
- 関節がポキッやパキッとなる音が聞こえる
- 家の周りで事故にあう
- 鼻を鳴らしたり、クンクン鳴いたりする
- 特に息使いが荒いのが見られる
- イライラや落ち込みなど行動の変化が見られる
- 筋肉の消耗や萎縮が股関節痛の原因や指標となる
股関節痛の影響を一般的に最も受ける犬種
前述したように、どの犬も、またどの年齢の犬も股関節痛にはなります。しかし、他の犬種よりもなりやすい犬種やタイプがあります。
下記の犬種が挙げられます。
- ニューファンドランド
- セントバーナード
- オールドイングリッシュシェパード
- ロットワイラー
- ジャーマンシェパード
- ゴールデンレトリバー
- アラスカンマラミュート
- ラブラドールレトリバー
- サモエド
- ダックスフンド
- マスチフ
- グレートデン
- オールドイングリッシュシープドッグ
体高より胴体が長い犬も痛みを起こしやすい傾向にあり、BMI値が高い犬は関節の問題を起こすリスクが高いでしょう。またある特定の性質をもって繁殖された小型犬も他の健康問題の中でもとりわけ股関節痛のリスクが高いとされています。
犬の股関節痛の原因
犬の股関節痛がひどくなる原因はさまざまです。もっとも一般的な原因は以下に挙げられます。
股関節形成不全
股関節形成不全とは、犬の股関節のソケット部分が正しい形をしていない状態の事です。これは、ずれて合わさっている為に、関節へダメージを与え、関節炎になります。骨がその受け口にきちんとはまらなければ、擦れる事により痛みや感染、炎症が起こります。感染症の兆候には、足を引きずったりくんくんと鳴いたりといった行動の変化でも現れます。
この症状はどの犬種にも起こる可能性かありますが、ジャーマンシェパードやゴールデンレトリバー、ニューファンドランド、ラブラドールレトリバーに良く見られます。股関節形成不全は遺伝的疾患と考えられていて、その血筋に伝承され子孫へと引き継がれていきます。
しかし、肥満や運動不足など、その他の要因により発病を促進させてしまいます。またそれに加え、この症状はどの犬にも年齢に関わらず発症しますが、老犬には一般的により多く見られ、成長の過程が関係しているようです。
骨関節炎
老犬の骨関節炎は自然な老化によっておこる関節の磨り減りが原因です。このことは肘や、肩、ひざ、背中そして腰とあらゆるところの関節におこります。
骨軟骨症/離断性骨軟骨炎
この症状は主に肩関節に起こりますが、股関節に起こる場合もあります。骨軟骨症は、関節のなめらかな軟骨の表面部に欠陥があって発症し、軟骨は骨の先端で変形していきます。
そうなる事で、下の骨から剥離し、それが問題となって痛みの原因となります。この症状は、運動を制限すれば、自然治癒で治ってしまう事もあります。
残念ながら、もし軟骨の一部が剥がれ落ちたり、関節内の軟骨がぐらついたりしていれば、外科手術は必要となる事もあります。不安定な軟骨は、取り除かねばならず、そうしない限り、軽度なものから激しい痛みまでさまざまなレベルの痛みを引き起こします。
レッグ・ペルテス病
この症状は、原因が知られていません。腰の骨の結合が分離し関節が炎症をおこします。
これは犬の後ろ足の大腿骨の先端部分が自然に退化したことによります。
この症状は主に若い犬に良く見られ、中でもトイ、ミニチュアなど小型犬が多く、マンチェスターテリアなどはこの病気の遺伝的要素を持っているようです。
肥大性骨異栄養症
急な成長によって引き起こされるその他の症状がHODです。これもまた、自然治癒や自分で解決していまう症状であり、永久にダメージを受けたり奇形となってしまうことは非常にまれです。HODは、犬の長骨にある成長板が炎症している状態です。
股関節痛の診断と治療
犬が股関節痛であったり、体のどこかが痛いようであれば、正しい治療のためレントゲンを取る必要性が出てくるでしょう。獣医師は両側の腰や、体の両サイド、またかばっている良いほうの足でさえ撮るよう支持する事もあるでしょう。同時に両サイドのレントゲンを撮った方が良いのは、進行するかもしれない部分もすべて確認出来るからです。
たいていどの犬もとても我慢強く、痛みを訴える事はとても稀です。だから自分の犬のことを熟知する事は非常に重要であり、そうすることで犬の痛みのサインを見逃さずに隠された兆候や行動の変化に気がつき認識することができるでしょう。いつもより寝ている時間が長かったり態度がいつもと異なることもあるかもしれません。遊ぶことやそれ以外のいつもの行動に興味を示さなくなったりするかもしれません。これらの兆候は分かりづらいものですが、しっかり注意深く見ていれば、犬が何を感じているかの手がかりは常に出されています。
股関節痛の治療をする場合、その治療法はさまざまです。少しの痛みをコントロールをする事で犬の生活にとても快適さを与える事もあります。獣医は痛みや炎症を抑えるものを薦め、コルチコステロイドやもしかするとそれらを組み合わせたものを薦める事もあるでしょう。
犬の関節を健康的に、滑らかに保つためサプリメントを処方されることもあるでしょう。グルコサミンやビタミンC、またMSM(メチルサルフォニルメタン)などのサプリメントはこのような目的のため薦められることもあります。かかりつけの獣医師が必要と感じたら、関節を潤滑にするため注射を打つこともあります。その他の治療で多くの飼い主の間でポピュラーになってきているものが、中国の鍼治療のようです。
これは人間と同様に犬にも、長年の痛みをコントロールする為に処方されていて、他の治療法と組み合わせても良い治療の選択肢です。
回復期にはあまり動き回らないように注意する事が大事です。また、運動は最低限に抑えましょう。運動の時間に、水中療法は関節痛を持った犬にはとても良い選択です。マッサージや温湿布のような治療でさえ痛みを抑え、和らげてくれます。犬がどこで寝ていても、暖かく、換気を良くしてあげましょう。湿気の多い状況は時に痛みを悪化させることがあります。関節が奇形の可能性があったり、どの治療法も痛みを和らげるのに至らないような難しい状況では、外科手術が必要となるかもしれません。
しかし、手術は股関節痛の治療としては第一の選択肢ではありません。他のどの治療法もうまくいかなかった場合に初めて考えられる方法です。
いつもの運動や栄養価の高い餌が股関節痛を”取り除く”という事までは出来ないにしても、進行を遅くしてくれるかもしれないという事は覚えておきましょう。
股関節痛を患ったまま生きていく
股関節痛を患ったまま生きていかないといけない犬もいます。しかし、犬の生活の質を改善できないという事ではありません。より動きやすいよう家中をアレンジし、犬が直面している身体的な困難に打ち勝てるよう手助けは可能です。
考えたほうが良い策
スロープ
犬が階段や家具を避けて歩けるようにスロープを取り付けてあげましょう。そうする事で、犬たちは飛んだり上ったりする必要はなくなり、ぶつかって痛い思いもせずに済むでしょう。
絨毯やクッション
木やタイルの床に滑らない絨毯などがあればとても助かります。そして古い椅子のクッションのようなパッド入りの表面で、柔らかく暖かい横たえられる場所は、犬の股関節にとても良いです。
犬用の扉
犬は階段を上ろうとしたりお気に入りのソファーやイスに飛び乗ろうとするとき、痛みを無視し自ら傷つけてしまう事があります。犬用扉は上に登ったりしない様、また目を離した隙にイスなどに飛び乗る事から防ぐのにとても役立ちます。
水は飲みやすく餌を食べやすく
食べ物や水を取り易いよう、食べやすく飲み易い高さにしておく。もしあなたの家が平屋でないのであれば、すべての階に水や餌入れを置いて犬が使い易いようにしておく事が大切です。またその入れ物を滑りにくいものの上においておき、飲んだり食べたりしている間に動かないようにしておきましょう。
温水を入れたボトルと電気カーペット
温水入りボトルや電気カーペットをタオルで巻いて犬のベットの中に入れ、夜は特に暖かくしてあげましょう。
定期的なブラッシング
本当に犬をかわいがって、愛されていると感じさせたいのであれば、日ごろからブラッシングをしてあげましょう。
残念ながら、犬が敏捷さをなくし動きにくい状態にあるとき、自分で毛づくろいするも痒いところに手が届かない状況となるでしょう。いつものブラッシングの時間に代わりにその場所をブラッシングしてあげましょう。
そうする事であなたのペットは快適になり元気にしてあげられるでしょう。
長年股関節の痛みに悩まされてきた犬を、より快適にし環境を整えてあげる手助けをしてあげられる方法はいくつかあります。良く考え、思い付く事で犬の大好きな動きを、より安全で苦痛の少ないものへと変える事が出来きます。
股関節痛を患った犬が動きやすようにする
犬は、痛みを感じている時に動き回りたがらない事があります。しかし、いつもの簡単な運動は痛みを抑え、筋力をつけ靭帯を強くし、柔軟性をつけ、血行を良くしてくれます。
さらに、簡単な運動は肥満になる可能性を下げます。人と同じように、犬も数分歩き回りウォーミングアップした後はさらに動き回りやすくなるでしょう。
しかし、犬が動きたがらない日は、おやつや大好きなおもちゃでおだてながら彼を立ち上がらせなければなりません。出来る限り楽しい体験をさせて、たくさんの愛と愛情を彼に注いであげましょう。
ただ、運動させすぎないようにだけは注意しましょう。なぜなら運動のし過ぎはさらなる体への負担とダメージを与えてしまうからです。犬の栄養状態を管理することも大事で、良く食べているかを確認し、健康的な体重を維持している事に注意しましょう。肥満は関節へ更に負担をかけ痛みが生じ、悪い状態がさらに悪化します。
つまり、犬の股関節の痛みは努力が必要とされますが、克服できないものではありません。その犬の取り巻く環境を少し変えて、食事の質を良くし、特定の運動をやり過ぎない様改良しなければならないかもしれませんが、すべてが変化しても、適切な治療やケアをしてあげれば、とても快適な人生を送れるでしょう。
※本掲載記事は、情報目的のため、犬に何らかの症状が見られた場合は獣医さんへ連れて行く事をお勧めします。
関連サイト:
- http://pets.webmd.com/dogs/guide/dog-joint-health-pain-osteoarthritis-and-other-joint-problems#1
- https://www.cesarsway.com/dog-care/senior-dogs/treatments-for-hip-and-joint-problems-in-dogs
- https://www.petcarerx.com/article/two-common-causes-of-dog-hip-pain/1409