なぜうちの猫はそんなに痒がっているの?

猫は生まれもってのトリマーです。毛を舐めて自分の身体をきれいにする事が大好きです。
しかし、気を付けていないと、その毛づくろいが強迫観念に駆られて行っている場合があります。

とは言えほとんどの場合、そのように異常に何かに駆り立てられたように舐めたり、ひっかいたり噛んだりするのは、シャム猫など決まった種族に起こることが多いです。もし今までにそういった行動をとらなかったのに、突然舐めたり引っ掻いたり、噛んだりし始めたら、それは脅迫観念によるものではなく、気づかれずに潜んでいる猫の皮膚症状の反応であるかもしれません。(→皮膚症状の記事

毛づくろいをし過ぎる事で、その部分の毛がなくなってしまい、炎症や急性発疹、開放創、かさぶた、感染症や寄生虫症などの問題を引き起こしてしまいます。
残念ながら上記に挙げた目に見える兆候をどれか見せるまで、その毛づくろいが通常のものなのか、過度なのかを見極めることは非常に難しいです。また奇妙なことに、猫たちはこの毛づくろいを誰もが見ていない(これを私たちは極秘の毛づくろいと呼んでいます)ところでするので、その毛づくろいがコントロールを失っているという状態を見落としがちになります。

猫の痒みの原因を見つけ出す際にもう一つ問題となる事が、猫の皮膚病はいろんな点でそれぞれが非常に似通っていて同じような症状が出るという事です。そのため、見てるだけであったり見た目の検査だけでは全く答えが出なかったり、痒みの隠れた原因を見つけ出すことも出来ないことがある。

以下は、かゆみを患った猫が出す、より顕著な症状の主な概要です。

痒みを持った猫が良く出すサイン

  1. 皮膚にダメージが及ぶ程の過度の引っ掻き、掻きむしりや噛みつき、吸い付き。
  2. 対照的な模様の脱毛
  3. 脂っぽい皮膚や毛に絡みついたふけ。これらの症状は粟粒性皮膚炎である可能性を示唆します。
  4. 内に出来るのと同じように猫の身体全体に出来た皮膚病変や皮膚潰瘍

悪い事に一度、皮膚病変のように見た目にも分かりやすい症状が進んでしまうと治すにはとても長い期間が必要となります。
その為、このような兆候や症状ををなるべく早急に発見することが大事であり、そうする事ですぐに治療が始められ、更に悪化する事を防ぐことができます。

猫の痒みを引き起こす皮膚症状

環境アレルギー

環境アレルギーにかかっている猫は、若いうちにその症状が現れる事が多いです。たとえば、季節が変わるときにその症状が現れ、時期が過ぎその症状が更に酷く長引くようになった時に恐らく気が付くでしょう。

時に飼い猫はハウスダストのような室内のアレルギーに反応してしまう事もあります。このような場合は、猫は一年中アレルギー問題を抱えることになります。場合によっては、猫はあなたが普段使っている掃除用の洗剤や香水等が付いたゴミなどにさえ反応してアレルギーを起こすことがあります。
猫を悩ますものが何かを正確に特定することは難しいですが、一度アレルギー源を特定し取り除いてやれば比較的早くその症状は回復するでしょう。

食物アレルギー

食物アレルギーを持っている場合、まず顔や首あたりの毛が抜けたり、時にほかの毛も同様に抜けたりするのに気が付くでしょう。また嘔吐や下痢、体重の減少などの症状も起こります。
日々の食事である、魚やチキン、ビーフも猫にとってはアレルギーの原因となりえます-たとえ以前に一度もアレルギーの反応が起こらなくても。食物アレルギーは訳も分からないうちに突然発症することがあります。
特定の食物アレルギーを見極め、引き金となっているものを取り除くには、8週間~10週間ほど低刺激性の食事を与え続けるしかありません。しかし、これは非常に難しく、獣医師はその方法を勧める前に可能性が高いその他の
痒みの元凶を取り除こうとするでしょう。

寄生虫

ノミ刺傷

ノミは痒みを持つ猫に最も多く見られる原因であり、ありがたい事に診断もとても簡単なもののひとつです。
目視だけでもノミは見つけられることもあります。もしそのような小さな虫を発見できなくても、小さな黒い点、つまりノミの糞を見つけることは出来るでしょう。
ノミの糞は、ノミが血を消化した時に、猫の毛の中に落としていきます。この糞は、たいがい猫の首回りや尻尾の付け根、腰のあたりで見つかる事が多いです。ノミやその糞を一番探しやすいところが猫のお腹で、毛が少なくすぐに見つけられるでしょう。猫が眠ってからそのお腹を触ったりして、ノミを探すのが良い方法だと思います。
ノミの姿をまったく見ないならば、一番考えられる可能性は猫が食べてしまっていることです。
このような場合、ノミどころかその糞も、確たる証拠を見つけることが全く出来ません。

たとえノミがいそうなところでノミを見つけられなくとも、猫がノミにやられていないという意味ではありません。
首回りや尻尾の付け根等を掻き続けるのであれば、念の為にも獣医師の勧めるノミ治療の薬を処方すべきです。
ノミは様々な方法で、時に人間を介してでも猫につくため、家の掃除をする事も良い防御策となります。

皮膚の寄生虫

その他、痒みの犯人は皮膚の寄生虫です。寄生虫は非常に深刻な痒みとなります。猫が外にいる動物と接触したりまた日頃から外へ出入りしている猫がより感染しやすいです。

良くないことに、ダニなどの皮膚の寄生虫は診断が難しい事があります。もしダニが問題の原因であるとわかったら多くの猫が局部用の寄生虫駆除剤が必要になってきます。また石灰硫黄合剤水溶液で体を浸す必要も出てきます。
皮膚の寄生虫を予防する一番の方法は、完全に室内飼いにする事です。そして外のいかなる動物とも接触しないように育てることが一番です。

虫刺され

虫に刺されたり噛まれたりして猫が痒がることもあります。ハエや蚊がひどい刺激や痒みもたらす一方でスズメバチやミツバチは痛みや腫れを伴います。
多くの場合、耳のあたりや鼻先に噛まれているのに気が付くと思いますが、それは虫が毛の少ない場所に引き寄せらるからです。

耳ダニ

耳ダニは炎症をおこし、特に若い猫によく起こります。しかし、その耳ダニは耳だけにはとどまりません。
ダニは動き回るので、猫の首や頭、尻尾や背中に至るまで広がっていきます。耳ダニは伝染性が高く、他の動物にも移ります。

白癬

白癬は比較的良く見られる疾患で、とてもひどい痒みを伴います。白癬は真菌感染症で、猫の皮膚だけではなく毛や爪にも問題をおこします。白癬の場合は、猫の皮膚に何らかの症状を見て取れることがあります。
中心が赤く剥げたようなものが出来て、肌もボロボロとした感じになっています。典型的に、そのような症状は猫の頭や耳、または尻尾あたりに良く見られます。
白癬は非常に伝染力が高く、もしその疑いを持ったらなば、その猫をゲージに閉じ込め他のペットから隔離し手も徹底的に洗うようにしましょう。

皮膚疾患

乾燥肌

乾燥肌の原因は、環境刺激から粗悪な餌や季節の変化に至るまでと非常に多くのものがあります。
しかし、もし猫の痒みがボロボロと皮膚が剥がれている痒みであれば、さらに深刻な問題が潜んでいる可能性があるので獣医師に診察してもらう方が良いでしょう。

日焼けのダメージ
日焼けによるダメージは人間に起こるのと同じく猫にもダメージとなりやすいです。特に白い猫や色素の薄い種族、また耳や鼻が白かったり明るい色の猫はそのダメージを受けやすいです。
耳は特に繊細ですが、鼻や瞼も同じように影響を受けます。外にいる猫は日焼けや肌のダメージの危険性が家猫より高くなりますが、すべての猫が影響を受けるものです。

猫のニキビ

猫のニキビは他の肌トラブルのように一般的ではないですが、痒みを引き起こすものとなります。
猫のニキビは概ね猫の顎に黒ずみのようなものができ、それが進行し痒みがでたり赤くなったりする状態です。
このような症状が起こると、それはニキビとなって、腫れてきていずれ潰れて痒みになったり、かさつきになったりします。注意すべきことは、細菌感染をして二次的な疾患になってしまう事です。

細菌性皮膚感染

これは非常にまれですが、たまに起こります。菌が増殖すると同時に増え、猫は痒みで苦しみます。
掻き過ぎによるひどい肌の外傷を作るたびに、感染する傾向があります。これらの感染は典型的な二次的なもので他の根本的な原因で起こります。

全身性疾患

猫の好酸球性肉芽腫症候群

これは好酸球と呼ばれているある種の白血球が過剰に増え、無秩序に作られることです。
異なった3タイプの症状がこの好酸球の過剰生産を発生させます。

  1. 好酸球性プラーク
  2. 好酸球性肉芽腫
  3. 無痛性潰瘍

これら3つの症状は、丸、あるいは楕円形の潰瘍口内炎、もしくは膨れ上がった傷、でこぼこだったりしこりが
あるような傷が見つかるでしょう。これらの傷は典型的に腹部や大腿、顔や口内に見られます。無痛性潰瘍は
上唇あたりに膿瘍病変を引き起こす事もあります。

皮膚がえぐれたり、脱毛したりする病気です。
症状の発生場所や状態によって無痛性潰瘍、好酸球性プラーク、好酸球性肉芽腫の3つに大別されます。原因ははっきりとはわかっていませんが、アレルギー(ハウスダスト、ノミの咬傷、蚊の刺咬、食物などによる)、寄生虫、細菌感染、遺伝などが関係していると考えられます。また、猫がざらざらした舌で体を舐めすぎることに関係があるようです。
※好酸球…動物の血液中にあって、体を様々な外敵から守っている戦士を「白血球」と呼びます。この白血球の中で、主に細菌やウィルスなどから体を守っているのが「好中球」と「リンパ球」と呼ばれ、主に寄生虫などから体を守っているのが「好酸球」と呼ばれます。この「好酸球」は寄生虫を退治する以外に、アレルギー反応の起きている場所へ急行するという任務も担っています。

落葉状天疱瘡

この症状は、足に痒みを出します。皮膚の自己免疫異常であり、表皮が固くなったり、うろこ状のようなものであったり、軽い潰瘍、膿胞のようなものが肉球に急速にはびこっているのを見つけるでしょう。
実にひどい痒みと痛みを伴います。

臨床的特徴は、皮膚に生じる薄い鱗屑、痂皮を伴った紅斑、弛緩性水疱、びらんです。紅斑は、爪甲大までの小紅斑が多いですが、まれに広範囲な局面となり、紅皮症様となることがあります。好発部位は、頭部、顔面、胸、背などのいわゆる脂漏部位で、口腔など粘膜病変を見ることはほとんどない。ニコルスキー現象も認められます。
※天疱瘡は、尋常性天疱瘡、落葉状天疱瘡、その他の3型に大別されます。

牛痘ウイルス

これもまた、珍しい事象の一つです。小さいネズミを狩るのが好きな猫に良く見られる事象です。牛痘ウイルスはネズミが猫を噛んだ時に発症します。噛み傷を通し皮膚にウイルスが入り込み、数日後、小さな潰瘍性結節が出てくるでしょう。これは痒みと痛みを伴います。

牛痘は現在も日本には存在しません。牛痘の病原体(牛痘ウイルス)は、昔は牛を自然宿主とする病原体と思われていました。しかし本疾病の発生は特定の国に限られており、牛を自然宿主と考えるには不自然なことが多くみられました。
様々な疫学調査の結果、この病原体の自然宿主はヨーロッパに生息する野生の齧歯類で、その他の動物も野生の齧歯類を介して感染していること、猫科の動物がこの病原体に感染して発症していること、ヒトの発症例を調べると大部分が猫との接触があることがわかりました。従って今でもこの病気の発生はヨーロッパに限られています。
搾乳者がまれに牛から感染することもあると思いますが、猫を介して感染したヒトが牛と接触することにより牛に感染させている場合の方が多いと思われます。猫間の伝播は稀で、猫が本疾病の感染源となるのは特殊な場合です。
国内の牛の見られる類似した疾病は、偽牛痘や牛丘疹性口炎で、パラポックスウイルスという別の病原体による病気です。パラポックスウイルスは天然痘のワクチンとしては使用できません。

その他の疾患と病気

退屈や不安

時に猫は退屈であったり不安を感じていたり、精神疾患を患っていたりすると、何かに駆り立てられるようにしきりに舐めたり掻いたり、吸ったりという行為をします。これは室内飼いの猫に良く見られる傾向があり、運動不足や外の世界と交流がない事が原因である可能性があります。
新しい家へ引っ越したり、新しい家族(動物でも人間でも)が増えたりなどの環境の変化もまた猫が強迫観念に駆り立てられた行動をおこしてしまう原因となり得ます。
猫が愛されていて、安心ができ快適だと感じることが重要で、毎日しっかりと運動をさせてあげ、刺激を与えることで退屈や不安から遠ざけてあげましょう。

痛み

猫は特定の場所が痛いと感じている場合も舐めたり吸い付いたり噛んだりする事があります。そのような行為を猫が同じ場所に、繰り返し何度もするようであれば、それは痛みが関係しているかもしれません。

残念な事ですが、長期間肌にひどいダメージがあると、皮膚がんへの危険性が高まります。
また、皮膚がんではなくても他の癌が関係して大きくなった腫瘍のせいでひどい痒みが起こる場合もあります。
全てのこぶやしこりに注意し、それが特に問題ではないことを確信づける事が大切です。

痒みを持つ猫の為のケア

猫の状態と、何が痒みの原因かによって、獣医師は様々な治療法を提案するでしょう。
ノミにやられている場合は、ノミ駆除の飲み薬を処方するでしょう。
食物アレルギーの場合は、特別食で害を与える食物を除去する方法を勧めるでしょう。
クリームのような塗薬を処方する場合もありますが、頻繁に舐めるようであれば、薬を舐めきってしまうので、その効果を無意味にしてしまうでしょう。

脂肪酸サプリメントや、抗ヒスタミン剤やスプレー、シャワー等の処置は時に効果があることもありますが、絶対ではありません。多くの場合、抗生物質やステロイド等他の推奨される治療法に頼らなければならないこともあります。
コルチコステロイドのような、ステロイド投与を選んだ場合、唯一その短所は副作用がある事です。
幸いにも、猫はステロイドの反応が人よりはひどくはない傾向ですが、それでもきちんと診断し処方されなければ、危険性はあり、時間と共にその効力も失われます。

関連サイト:

  • https://vcahospitals.com/know-your-pet/ear-mites-otodectes-in-cats-and-dogs
  • https://vcahospitals.com/know-your-pet/feline-eosinophilic-granuloma-complex-in-cats
  • http://www.skinvetclinic.com/pemphigusfoliaceus.html
  • https://goo.gl/5kg9VC